あなたは、大事な用を足して、トイレットペーパーを使い切った後の
「トイレットペーパーの芯」の存在を、どう想う人間だろうか?
なんて、今日はとても可笑しな質問から書きはじめてみたいと思うのだけど・・・
こちらは、僕の事務所・澁谷デザイン事務所のトイレのある日の風景。
使い切ったトイレットペーパーの芯が捨てられることなく、何気なく並ぶ風景。
「もう用の無いものなのだから、捨ててしまえばイイのに」
・・・と思うのが、今の社会全体の極々普通の感覚であり、姿勢かもしれない。
しかし「トイレットペーパーが無くなった」その瞬間に、
その用無しとなった「芯」に対する、
なんらかの「感情・気持ち」を自分の中に有するということが
きっとデザインを自分のものにする、とても大切な一歩であり、種であろうと思う。
イタリア・ミラノ出身のデザイナーに
「アキッレ・カスティリオーニ」という偉大なデザイナーがいた。
彼は1989年のアスペン国際デザイン会議という場での講演会の際に
聴衆へのささやかな贈り物・プレゼントとして
自作の図面を全てまとめて細長い紙にプリントしたものを用意したのだが、
なんと、その紙はクルクルと丸められ、トイレットペーパーの芯の中に入れて
人々に手渡されたという話がある。
彼の日々のデザイン姿勢の中において、
どこか「高級で贅沢なもの」は、何気なく排除され、
「用途に最適」で且つ「最も安価なもの」がそこには選択されていた。
そんな日常に対する姿勢、デザインの思考を
僕らも、トイレットペーパーを馬鹿にすることなどなく、
大切に持ち得たいものだな〜と、
今日もしっかり用を足して、
しっかり用無しになったトイレットペーパーの芯を眺めながら
じっくりとトイレで想い、デザインのことを愛でている。
ではでは、国語・算数・理科・デザイン! (投稿:澁谷和之|澁谷デザイン事務所)