コンビニ正面の駐車場に車を停めた際、その正面ガラス窓などに、
よく「A4サイズ」の紙に目一杯に大きく文字をプリントして
メッセージ(デザイン)しようとしている光景を目にする。
「今ならチキン3割引!」とか、「アルバイト募集中!」とかとか。
僕はあの「A4サイズ」の紙を目一杯活用して
コンビニやお店の店員さんが「何かを伝えよう」としている精一杯の姿勢を
『A4グラフィックス』と名付けて、心から愛しているし、応援している。
自分たちができる(店内でできる)精一杯の出力技術で
(多分A4サイズ以上の紙にプリントできるプリンター設備が備わっていないのだろう)
可能な限り「大きな文字」で、分かりやすくお客さんにメッセージしたい……という
とてもピュアで、とても小さな「デザインの意思」を、そこに感じてしまうからだろう。
![](https://akitade.jp/yod/wp-content/uploads/2021/08/1111写真-768x1024.jpg)
こちらはコンビニでの写真ではないが、某所で確認された「A4グラフィックス」。
『コインロッカー』と、一文字一文字、A4サイズの紙にデカデカと出力し
並べて貼られた、なんとも真っ直ぐなメッセージの光景。
なんとも、このぎこちない所作が、愛おしいではないですか……。
僕は、日常的にこんな “ピュアなデザインの風景” を目にすると、
テクニック・小手先にばかり頼りはじめてしまっている
今の自分の「グラフィックデザイン」を戒めたくなる気持ちになるわけですが。
そうした愛でる眼差しでこのA4グラフィックスをよくよく見てみると、
「ロッカー」の小さい「ツ」の文字まで、無駄に大きくしてしまっていることに気付く。
本来であれば、ここの「ツ」は他の文字に比べて小さくて良いハズなのに、
どうしてか、こうしてか、伝えたい気持ちが勢い余ってか、
他の文字よりも大きな「ツ」の文字になってしまっている……。
しかも、もしかしたら、ここにある情報の中で一番大切かと思われる
一番左の「コインロッカーのマーク」と、コインロッカーのある位置を指し示す「矢印のマーク」が
最も小さくプリントされてしまっているこの状況。(きっとこのマークはもう少し大きくできるよね?!)
このチグハグで、前のめりで、まさに「ロック!(ロッカー!)」なデザインの片鱗を、
僕は、心から愛している。
「デザイン」とは、特殊技術を持っていると勘違いされた
「デザイナー」と呼ばれる人たちだけが、専門的に行う行為ではないことを、
本事業「国語・算数・理科・デザイン!」では、口酸っぱくメッセージしている。
そういう意味でも、この「A4グラフィックス」のような
日常的で、生活的な、市民のデザインがきちんと機能しはじめる社会こそ
とても健全で、健やかで、生活者にやさしい環境なのだろうと、僕は思う。
……なんて言いながら、無駄に “テクニック” と “プリンター設備” なんてものを
兼ね備えてしまった、「デザイナー(デザイン事務所)」と呼ばれるらしい僕は、
ついつい「A3」とか「A3ノビ」の一段階大きいサイズで背伸び(ノビ)して見せたりしてしまう
そんな不自然で、生活者にやさしくない……、デザイン被れの人間なのかもしれません……。
ではでは、国語・算数・理科・デザイン! (投稿:澁谷和之|澁谷デザイン事務所)